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福岡地方裁判所 昭和32年(ワ)843号 判決 1957年12月10日

原告

右代表者

法務大臣 唐沢俊樹

右指定代理人

福岡法務局訟務部長検事

小林定人

右同法務事務官

元永文雄

右同大蔵事務官

橋本英敬

福岡市大字塩原九百六十一番地の一

被告

森山商事株式会社

右代表者代表取締役

平山彌市

右当事者間の昭和三十二年(ワ)第八四三号詐害行為取消請求事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

訴外板付ハイツ有限会社が昭和三十一年六月三十日別紙目録記載の不動産を訴外春日コート有限会社に譲渡した行為はこれを取消す。

被告は別紙目録記載の不動産に対する福岡法務局老司出張所昭和三十一年十一月二十四日受付第五六〇〇号による所有権取得登記の抹消登記手続をなせ。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告指定代理人等は主文と同旨の判決を求め、その請求の原因として、

一、福岡県筑紫郡大野町筒井七百三十七番地の一所在訴外板付ハイツ有限会社は、昭和三十一年六月三十日現在、昭和三十年度法人税及び源泉所得税その他過少申告加算税、重加算税、利子税等の合計金七十四万三千八百四十円の国税を滞納したので、右滞納国税を徴収すべく昭和三十一年度法人税等の納付督促状は同年十二月八日に、同年度源泉所得税等のそれは昭和三十二年二月十四日にそれぞれ発送され、右督促状はいずれもその頃前記訴外会社に到達した。

二、ところが訴外板付ハイツ有限会社は昭和三十一年六月三十日右租税債権についての差押を免れるため、故意にその全資産にあたる別紙目録記載の建物二十八棟、及びオートバイ、外什器、備品等を合計金六百八万五千八百三十三円で、その情を知悉する福岡市小鳥馬場九百五十二番地所在訴外春日コート有限会社に売渡し、ついで同会社は同年十一月二十日これまたその情を知悉する被告に対し右建物等を売渡した。

三、そして右建物に対する所有権移転登記は訴外板付ハイツ有限会社から春日コート有限会社を経由することなく、直接被告名義に福岡法務局老司出張所昭和三十一年十一月二十四日受付第五六〇〇号をもつて登記された。

四、しかして訴外板付ハイツ有限会社は訴外春日コート有限会社への右譲渡行為により無資産となつたものである。

五、よつて原告は被告に対し、国税徴収法第十五条に基き、訴外板付ハイツ有限会社が訴外春日コート有限会社に売渡した物件のうち前記租税債権七十四万三千八百四十円の範囲においてその取消を求めるものであるが、譲渡物件の建物上には原告の租税債権に優先する福岡市天神町二番地株式会社福岡相互銀行の債権元本極度額金二百万円の債務を担保する根抵当権設定登記が存するので、この合計額に見合う別紙目録記載の建物について訴外板付ハイツ有限会社と訴外春日コート有限会社間の前記売買行為の取消を求め、且つ被告の所有権取得登記の抹消登記手続を求めるため本訴に及んだ。

と述べた。

被告は適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、且つ答弁書その他の準備書面も提出しない。

理由

原告の請求原因事実は被告においてこれを自白したものとみなすべく、右事実によれば原告の本訴請求は理由がある。

よつて原告の本訴請求は正当としてこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川井立夫 裁判官 中池利雄 裁判官 麻上正信)

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